Google Analytics Laboratory
仕様理解

GAの「新規とリピーター」の正しい捉え方

GAの「新規とリピーター」の正しい捉え方

今回はGoogleアナリティクスを学んだばかりの頃に特に混乱した「ユーザータイプ」ディメンションの仕様について触れていきます。

GAを利用する方ならばマストで押さえておくべき「新規とリピーター」の概念。私がGAを学び始めた2017年時点でも、この概念について多くの先駆者の方が解説記事を公開してくださっていました。

当時、身近に詳しい人間がいなくて自力で必死に学んでいた際には、このような記事で正しい知識が学べたことに本当に救われました。心の底から感謝しています。

多くの方が触れていたこの「新規とリピーター」の概念に、最近新たに気づきがあったので拙い説明ですがご紹介したいと思います。

ITPの影響で新規をカウントしやすい傾向にある今、少しでもこの記事がGAユーザーの皆様のお役に立てば幸いです。

 

※本稿でご紹介している内容を参考にご自身の環境に変更を加える際は自己責任でお願い致します。
記事の内容は2019年9月時点で確認している最新の情報をまとめておりますが、万が一記述内容に誤りがある場合はTwitterのDMなどでご連絡頂ければ幸いです。

本稿で取り上げる内容
  • 「ユーザータイプ」ディメンションの仕様
  • 「ユーザー」ディメンションの仕様
  • 2回目のセッションが「New Visitor」と記録されるケースについて
  • ユーザーは計測するがセッションを計測しないケースについて

ユーザータイプとは

改めて「ユーザータイプ」ディメンションの基本のおさらいをしておくと、これは「ユーザー」を定義するものではなく「セッション」を定義するものです。

ユーザータイプの基本的な考え方

ユーザーごとに記録されるセッションを

  • 1度目のセッションを「New Visitor」と記録
  • 2度目以降のセッションを「Retuning Visitor」と記録

というように区別しているのが「ユーザータイプ」ディメンションです。

名称からしてユーザーごとに「新規の訪問者」「リピーター(の訪問者)」という区別をするものと誤認しやすいですが、セッションを区別しているディメンションと覚えておきましょう。

各レポートでの見え方

オーディエンスレポートの抜粋
例:オーディエンス > 概要 レポートのユーザータイプの円グラフ

円グラフで表示しているのはユーザーの数ではなくセッションの数だと確認できます。

新規顧客とリピーターレポートの抜粋
例:オーディエンス > 行動 > 新規顧客とリピーター レポートの抜粋

「New Visitor」と「Returning Visitor」に区分されたセッションの数が確認できます。

また、「New Visitor」と記録されたセッションを発生させたユーザーの数を表す「新規ユーザー」と、サイト全体のセッションに対して「New Visitor」のセッションが何%なのかを表す「新規セッション率」の指標も確認できます。

セグメントでの見え方

GAはGoogleが定義した様々なセグメントがデフォルトで用意されています。その中の「新規ユーザー」「リピーター」という2つのセグメントは「ユーザータイプ」ディメンションでセッションを定義したセグメントです。

  • 「新規ユーザー」セグメントは【ユーザータイプが New Visitor】のセッション
  • 「リピーター」セグメントは【ユーザータイプが Returning Visitor】のセッション
新規ユーザーセグメントの設定内容

繰り返しになりますが、「新規ユーザー」という名称のセグメントではあるもののユーザーではなくセッションベースで定義をしているということに注意して活用しましょう。

実際の計測での見え方

日付 / ユーザー ユーザーA ユーザーB
1月1日 初回訪問
1月2日 2回目の訪問
2月1日 3回目の訪問 初回訪問
2月28日 4回目の訪問
3月1日 5回目の訪問 2回目の訪問

上記のように二人のユーザーが複数回サイトを訪問してくれたケースで説明します。

2月単月(2月1日~2月28日)の期間で集計すると

  • New Visitor(新規ユーザー)のセッション 1
  • Returning Visitor(リピーター)のセッション 2

と計測され、期間内に3回のセッションが計測されます。

検証

オーディエンス > 概要 レポートの抜粋
例:オーディエンス > 概要 レポートで各セグメントをセットした場合

新規セッションとリピーターセッションを合計すると、期間内のセッション合計と合致します。すべてのセッションは必ずどちらかに区分されることが確認できます。

また、新規ユーザーとリピーターを合計しても、サイト全体のユーザーの数とは合致しません。期間内に「New Visitor」のセッションと「Returning Visitor」のセッションを発生させたユーザーがいる場合、それぞれに1カウントされる為ですね。

例:初日に初訪問(計測期間内の)後日に再訪問したユーザー
例:初日の午前中に初訪問同じ日の午後に再訪問したユーザー など

ユーザーとは

本稿ではセッションについて深堀りしていきますが、GAで計測されているユーザーの計測仕様についても触れていきます。

「初めて訪問したユーザーのセッション」「再訪問してきたユーザーのセッション」と判定する為に、どのようにユーザーを定義しているか説明していきます。

結論から言うと、GAのデフォルトの設定ではユーザーをそれぞれ判別しているわけではなくブラウザに保存されたCookieで識別しています。

ブラウザごとのユーザー判定

同じユーザーであっても、ブラウザごとに識別子が異なるので別人とみなされます。

上図ではユーザーAはスマホのChromeブラウザで訪問した後にPCのFiraFoxブラウザで2回目の訪問をしています。

もし同じブラウザで2回目の訪問が発生していれば「AさんのReturning Visitorと記録されるセッション」が計測されますが、別のブラウザで再訪問した場合は「別人BさんのNew Visitorと記録されるセッション」が計測されます。

スマホと同じChromeブラウザでPCから2回目の訪問をしても、Googleアカウントやサイト側の会員登録情報などをベースに判定をしない限り別人と計測されます。

ユーザーの識別子の確認方法

ブラウザごとに記録されるCookieに、サイトに実装されたGAが付与した識別子が与えられます。この識別子でユーザーを判定するわけですが、オーディエンス > ユーザーエクスプローラー レポートなどで確認することができます。

オーディエンスレポートで1ユーザーの情報を確認する例

クライアントIDという情報が格納されており、これはブラウザごとにすべて異なる値です。

Cookieの保存期間

ブラウザごとに保存されるCookie情報ですが、GAが付与した識別子(クライアントID)で同一ユーザーと判定できるのは2年間です。

Cookieでユーザーを識別

つまり、ユーザーセグメントで判定されるのは

  • 過去2年以内にサイトを訪問したことがないブラウザで、計測期間内に初めて訪問したセッションの数=「New Visitor」
  • 過去2年以内にサイトを訪問したことがあるブラウザで、計測期間内にサイトを訪問したセッションの数=「Returning Visitor」

というわけですね。

ITPの影響

ITP(Intelligent Tracking Prevention)とは、Apple社が提供する「Safari」ブラウザに搭載されたサイトトラッキングの抑止機能です。

ITP や 1st Party Cookie、3rd Party Cookie について本稿では深く掘り下げませんが、2019年3月25日にリリースされたSafari 12.1に搭載されたITP2.1の影響で、SafariユーザーのCookieは2年間保持されないということだけ取り上げたいと思います。(後日に別記事で書きたいですが)

ITP2.1の影響
ITP2.1が適用されるSafariブラウザでは、Cookieの保存期間が最大7日間となっています。これにより、8日以上経過して再訪問したユーザーを同一ユーザーと判定することができません。

これにより、新規ユーザーと判定されやすくなったので「New Visitor」のセッション比率が高まっています。

イレギュラーな計測結果となるレポートの例

ようやく冒頭でお話した「最近気付いた仕様」について触れていきます。ここまで書いてきた内容と矛盾する計測結果になるお話です。

セッションが途切れる3つのルール

まず、GAではセッションが途切れる(終わる)と判定するルールは3つあります。

  1. 操作が行われない状態で30分経過
  2. 参照元が変わる
  3. 日付をまたぐ

現在普及しているanalytics.jsとgtag.jsのトラッキングコードで計測されるセッションの判定は原則この3つのルールで行われています。(余談ですが、過去にはブラウザを閉じたらセッションが切れる仕様もあったそうですね)

また、上記のルールはデフォルトの定義です。例えば①のルールに関して言えば、プロパティの設定から30分ではない期限に変更することができます。セッション判定の設定画面

2回目のセッションが「New Visitor」と記録されるケース

セッションが終了するルールを確認したところで、1つ目の計測例をご紹介致します。

本稿の冒頭から「初回セッション=New Visitor」「再訪問セッション=Returning Visitor」と判定されると説明してきましたが、2回目のセッションが「New Visitor」となるケースです。

検証

新規セッション率の検証
ある期間のユーザータイプのレポートの抜粋ですが「New Visitor」の新規セッション率が100%を超えています。(実数をお見せできないので、見づらくて申し訳ありません。)

New Visitorのセッションの数が、新規ユーザーの数を上回っているためこのような結果になっています。

新規セッション率とは、セッションの数を新規ユーザーの数で割って比率を表す指標です。

今までの説明のとおりであれば、「New Visitor」セッションを記録したユーザーの数を表す「新規ユーザー」指標の数と「New Visitor」セッションの数は合致するはずです。

一人のユーザーの初回訪問しか「New Visitor」と記録されなければ、ユーザータイプが「New Visitor」の新規セッション率は同じ数なので100%となるはずですね。

しかし、上図では100%を超える新規セッション率が計測されています。
これは、ユーザーが複数回「New Visitor」セッションを発生させていることを示しています。

検証2

オーディエンス > ユーザーエクスプローラー レポートで「新規ユーザー」のセグメントを適用して検証してみます。

 

セグメントを適用すると、クライアントIDごとの計測結果が確認できる一覧の画面では「New Visitor」のセッションだけが計測されます。

特定のクライアントID=ユーザーを指定して詳細を確認する際は、「新規ユーザー」セグメントが外れて、「New Visitor」セッションだけでなく計測期間内の行動履歴が確認できます。(下図)

※記事公開時点ではユーザー別の詳細を確認する画面でもセグメントが適用されていると誤った内容を記載しておりました。誤解を招いてしまい申し訳ございません。

2回目のセッションも「New Visitor」のユーザー

あるユーザーは9月1日の23:58に初訪問し、セッション継続途中で日付が変わり、2回目のセッションが発生しています。

2回目のセッションが「Returning Visitor」であれば本稿の冒頭からご説明している原則に則っている為違和感はありません。しかし、カスタムレポートでこのユーザーのセッションに「ユーザータイプ」ディメンションを当てはめて見ると異なる結果が確認できました。

検証3

カスタムレポートによるユーザータイプ検証
上図はクライアントIDの値を格納するカスタムディメンションで、検証2のユーザーを指定した計測結果です。

日付をまたいで初回訪問セッションが途切れたこのユーザーは、2つのセッションどちらも「New Visitor」であることが確認できました。

 

つまり、厳密に言えば
「New Visitor」は初回訪問のセッションと初回訪問時に日付をまたいだ際の2回目も同様に判定するものであると、定義できると認識を改めることになりました。

セッションはカウントせず、ユーザー数のみカウントするケース

「ページ」や「コンテンツグループ」などのヒットスコープのディメンションを利用する際も注意が必要です。

「ページ」ディメンションに対する「セッション」指標の計測の仕方

ページごとの計測結果

上図で表しているように、セッションで複数ページを閲覧したユーザーが居た場合、すべてのページに対して「セッション」指標が記録されるわけではありません。

「セッション」はランディングページのヒットに紐付いて計測されるため、それ以外のページでは0となります。

もし「ページごとのセッション・新規セッション率を計測するレポート」を作った場合は「New Visitor」と判定されているセッションで回遊した2ページ目以降のページが「セッション」が0となるので「新規セッション率」は100%になりません。

「ヒット」スコープのフィルタでも注意が必要

フィルタを設定したレポートでも注意すべき点があります。(というかカスタムレポートは注意すべき点が沢山ありますね…。)

例えば「コンテンツグループ」ディメンションと「ユーザー」「セッション」指標のカスタムレポートで、「グループA」を除外するフィルタを設定した場合

ヒットスコープのフィルタの影響
上図のような計測結果になります。
セッション中の最初(ランディングページ)のヒットが除外された場合のみ、セッションがカウントされません。
セッション中に除外されないヒットがあれば、ユーザーはカウントされます。

つまり、これがNew Visitorのセッションだった場合、グループBの新規セッション率は100%にはなりません。

時刻をまたぐセッションも注意が必要

例えば01:50にランディングし、別ページに遷移して02:10に離脱したセッションの場合、「時」ディメンションで時刻ごとの「ユーザー」「セッション」を計測するレポートで下記のような結果となります。

  • 1時:ユーザー1、セッション1
  • 2時:ユーザー1、セッション0

繰り返しになりますが、セッションはランディングページに紐づくため、2時の時間帯に記録されるヒットはランディングページが無いためセッションは0となります。

まとめ

初回訪問時のセッションが日付をまたいで、2回目のセッションに切り替わった際は「New Visitor」と判定されるなど、幾つか珍しいケースをご紹介させて頂きました。

私が挙げた例以外にも、ユーザー指標をオンにしている場合の計測の仕方やディメンションをセットした際の計測の仕方など、まだ他にも注意すべきポイントはあると考えています。

集計仕様に関して、体系的に正しい情報を学びたい場合はご自身で検証して頂くか、セミナーなどで学ぶと良いと思います。

個人的には、衣袋さんのセミナー・有料noteをお勧めします。
※セミナーのご案内などはご自身でご確認ください。

ITPの影響もあり、改めて「新規とリピーター」の区分や参照元ごとのCV評価の仕方が注目を集めていますので、本稿が少しでもGAを利用する皆様のお役に立てば幸いです。

最後になりますが、本稿でまとめた内容は私の環境で検証した結果をまとめたものです。もし誤りがございましたら申し訳ありません。その際はお声掛け頂ければ幸いです。